介護ブログ

母編18《ホスピス入院と、覚悟。》

2011年6月中旬、某病院の最上階にあるホスピスへ入院。

主治医は背が高くよく日焼けして、ちょいワイルドな感じのロマンスグレー。

入院日の病室で、母と私のやり取りをじっと見ていた主治医が、母へ一言。

 

「娘さんを、そんなに顎で使っちゃいけませんよ。

 ありがとうの一言は、ちゃんと言わなきゃダメでしょう。」

 

痛みや辛さは、人の性格をも変える。

この頃の母は、ちょっとした暴君だった。

入院した翌日。

父と共に受けた主治医面談で、余命宣告をされた。

 

「よくもって、今年いっぱいでしょう。」

 

 

ある程度覚悟はしていたけれど、半年という短さの宣告に、

体中が冷たくなった。

言葉を失った父に代わって、質問した。

「これから…どんな症状になりますか。」

返された主治医の答えに、体の震えを止められなくなった。

 

とどまる事の無い、右鼠蹊(そけい)部の皮膚転移。

深く抉(えぐ)れ拡がり続けて行く、右脚付け根の癌傷。

骨盤にも広範囲の癌転移が見られ、

右脚全体の浮腫は皮膚転移によるリンパの滞りで、今後も益々酷くなる。

癌傷が動脈に食い込んで、大出血を起こすか。

心臓が弱り衰えて、動きを止めるか。

どちらかの原因で命を落とすだろうと、宣告された。

 

映画やドラマのように

「助けて下さい!」とは、言えない病院。

末期癌を患う人の苦痛を緩和し、なるべく穏やかな状態で、

「人間らしく」お見送りする場所。

それが、ホスピス。

「お部屋が空きました」が、意味するのは。

入院していた方が一人、苦痛から解放され、旅立たれたという事。

 

 

宣告を受け呆然とするばかりの父では、話にならないと判断したのか。
ちょいワイルドロマンスグレーな主治医はその後専(もっぱ)ら、

私に語りかけてきた。

ホスピスという場所は、患者本人と家族の双方に、

 「旅立ちとお見送り」の準備を促す場所でもあるので。
二度目の面談で、病状進行と緩和手段の説明の後、葬儀の話を持ち出された。

 

避けては、通れない道。 

母を「送る」覚悟を、決めなければならない。
私にとって人生初の、「お見送り」準備が始まった。
 
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