介護ブログ

母編7《思考と感情のタイムラグ、慣れの怖さ。》

 

検診に同行し、母が隠していた事実を聞いたと、主治医へ伝えれば。

 

「残念ですが、治療の手段が無くなりました。」

 

と、静かに告げられた。

再手術はできない、抗癌剤も効かない。

助けられる手立ては、もう無い。

 

「どれくらい、ですか?」

 

母を一度、待合室へ出し。

主治医と2人になった診察室で、意外な程、落ち着いた声で問えた。

母の、命の時間を。

 

「はっきりとは、まだ・・・」

 

余命宣告はされなかったけど、長くないと感じ取れた。

どうしたら、いい?

症状進行して、益々酷い容態になって行く母を、どうケアすればいい?

託される家業運営も、持病有りの複数名家族も、どう対応して行けばいい?

誰に何を、どの様に相談すればいい?

 

いきなり突き付けられたのは、山積みの問題。

どこから着手したら良いのかも、相談先も全く見えず。

本当に、心底、途方に暮れた。

母親を喪う事への哀しみは、ずっと後から、まとめてやって来た。

 

 

「外科に行けば、違う見解もあるかもしれない。」

 

内科の主治医に言われ、藁にもすがる思いで、外科受診の予約を入れた。

が、失敗としか言い様の無い対応だった。

 

主治医検診と同日の午後に、急遽予約が取れた外科。

そこで対応した2名の外科医師は、丸太の様に腫れ上がった母の右脚と、

皮膚を侵食しつつあった癌傷に眉をひそめ。

診療情報と検査結果を見ながら、立て板に水の如くの説明を始めた。

 

「右脚はもう、諦めるしかない。」

 

「脚の付け根から切断する事になるが、身体が手術に持ち堪えられるかどうか。」

 

「手術に耐えられたとしても、合併症や感染症、転移などの、術後リスクも大きい。」

 

説明される中、母の顔色が蒼白になっていった。

その事に気付いた看護師さんが、医師に呼びかけ言葉を止めようとするも無視され。

私が強引に口を挟み、説明を中断してもらった。

 

「母にこれ以上、聴かせたくない。 

 診察室から、母を出させて欲しい。」と。

 

そこに至り外科医師達もようやく、母の顔面蒼白に気付き。

看護師さんに母を連れ出させてから、ショックを受けさせた事を、

小声で気まずげに謝ってきた。

 

相手の心情をいちいち気にしていては、務まらない職種なのだろうと思う一方で。

患者を「仕事」として見慣れる内、死と直面している相手の苦しみや恐怖にも、

鈍感になってしまうものなのかと。

悪意無き無神経さを腹立たしく思うより先に、軽くゾッとした。

 

Copyright (C) 2017 KAIGONOZUKAN. All Rights Reserved.